欧州の食を広く解説する手帳、豊富な用語解説が嬉しい、すでに絶版だが復刊が望まれる

本書はタイトル通り、ヨーロッパの18カ国にわたって、その国の料理に関する情報と用語が掲載されたリファレンスブック(辞書・辞典)だ。著者は英国のジャーナリストだが、詳しい経歴は不明。ページを開くと、各国ごとにまずその国の食生活の概要が記され、その後、食に関する用語がリストとして並ぶという構成である。本書の大部分はこの用語集に充てられており、地図以外に図版などは使われていない。

欧州18カ国とは言っても、全体のうち約半分のページがフランスとイタリアに割かれているのは当然だろう。最も情報量の少ないのはルクセンブルグで用語集はなく概要のみだが、私たちがあまり馴染みのないスイスやオランダなどといった国々の料理についても、それぞれ数ページを使って解説している。

本書が最も実用として役に立つのは、その国のメニューを読むときだと思うのだが、日本版はカタカナ読みのアイウエオ順に用語が掲載されているため、読み方の判らない文字を、その国の言語表記で検索することができない。つまり、現実には読み物として以外にはあまり役に立たない本なのだ。だが世界の食に興味がある人にとっては、読み物として眺めているだけでもかなり楽しい本に違いない。

日本版には、「本来1冊であった内容を『ヨーロッパ編』と『世界編』に分割した」と記載されているが、『世界編』が出版された形跡はない。本書の版元である鎌倉書房も、もうすでに存在しておらず、本書は完全な絶版である。もう二度と入手できない可能性が高いが、ぜひ復刊あるいは新しく翻訳して欲しい書籍のひとつだ。

書名:「ヨーロッパ18カ国 メニュー・ガイド」
著者: クェンティン・クルー
訳者:長田光弘
出版社:鎌倉書房
判型:ポケットブック/253ページ
価格:1,600円(本体1,553円)
発行日:1989年12月30日(初版)

(入江直之)
「外食レストラン新聞」(日本食糧新聞社)連載

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