[外食レストラン新聞(日本食糧新聞社)] (2010/3/01)

2010年の初めにインターネットの世界で最も大きな話題となったのは、検索サービスを提供するグーグルが中国から撤退を表明するというニュースだ。これは、単にグーグルの検索サイトから中国版がなくなるという話ではなく、「ヤフー」や「マイクロソフト」などをはじめとして、中国に進出している他のIT企業の動向にも関わる。さらには米国政府や中国側が米中関係について言及するなど、事態は政治的な問題にまで発展している。

つまり言い換えれば、米国や中国にとって、インターネットを通じたITの世界というのは、経済や外交に関連して政府が公式発表を行うくらい重要な分野だということだ。そうした意味では、日本の政府がインターネットやITついて持っている認識や政策は、かなりお粗末なものだと言えるのではないか。

さて、そのグーグルだが、検索や広告の他にもさまざまなサービスを行っていることは、これまでもこの連載で何度も採り上げてきた。今回は、そのサービスのひとつである「グーグル・アナリティクス(Google Analytics)」についてご紹介したい。

「グーグル・アナリティクス」(以下「アナリティクス」)とは、ユーザーが管理しているサイト(ホームページ)の利用状況を簡単に把握し、分析できるサービスだ。「アナリティクス」を活用するためには、インターネットやホームページについて多少の知識と経験が必要だが、決して技術者レベルのノウハウが必要なほどではない。利用状況を把握したいページごとに、「アナリティクス」が発行する「トラッキングコード」と呼ばれるデータ集計用の小さなプログラムコードを書き込む(コピー&ペーストで貼り付ける)だけで、後はグーグルに登録した管理用のページから、インターネットにつながったパソコンですべてのデータを参照できるのだ。そして何よりも凄いことは、このサービスは基本的に無料なのである。

この「アナリティクス」を使えば、自社の管理しているサイトの訪問数はもちろん、どのページを見ているのか、アクセス者がどこから訪れたのか、検索サイトのどのようなキーワードからたどり着いたのか、といった情報を細かく分析することができる。つまり、店舗ビジネスにおけるPOSデータのような情報を、無料で簡単に得ることができるのだ。

ビジネスにとって、何よりも重要なのは「顧客(=すでに取引のある客)」と「見込客(=これから取り引きする可能性の高い客)」に関する情報だ。インターネットを使ったビジネスに世界中で注目が集まっているのは、インターネットではこうした「顧客」や「見込客」に関する情報が、リアルの世界よりもはるかに簡単に、しかも高精度で取得できるからである。

しかし、そうした重要な情報を得るためには、当然ながら多くのコストがかかるのが当り前だ。多くの企業では、POSのような情報システムを構築するために多くの費用を投資している。グーグルは「アナリティクス」を開発するために莫大なコストをかけているはずだし、もちろん「アナリティクス」を高額で販売あるいはレンタルすることも可能なはずだ。それを無料で提供しているところに、グーグルとインターネットの世界の凄さと恐ろしさがあるのだということに、気づいていただけるだろうか。

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