パソコンが普及したおかげで、自店のメニューをパソコンで作る飲食店が増えて来た。先日、筆者が訪れた東京都下の中国料理店もそのひとつで、若奥様がデジカメで写真を撮り、パソコンを使ってメニューや店内のPOPを制作している。その店で、効果的なメニューの作り方について質問があった。そこで今回は、パソコンで店舗の印刷物を作る際のポイントをいくつか挙げてみよう。

飲食店のメニューや店内のPOP(ポスターやテーブルに置くもの)のように少部数でも良い印刷物は、もっともパソコンで制作するのに適したアイテムだ。印刷にはインクジェット式のカラープリンタを使用する。有り難いことに、日本では高度な技術で作られたプリンタを非常に安く買うことが出来る。A4サイズ印刷のものなら1万円以下が当たり前であり、A3サイズに対応している機種でも2~3万円という価格で入手可能だ。インクは4色のもので充分。インクの色数が多いと写真はキレイに仕上がるが、交換インクの費用がかさむ。そもそもメニューをパソコンで作るメリットとは、必要に応じて修正を加えたり、汚れたら新しいメニューに差し替えたり出来ることにあるのだから、必要以上に印刷コストがかかってしまっては意味がない。「写真がキレイに印刷できる」というのは、実は交換インク売って利益を出したい機器メーカーの戦略であることを知っておくべきだろう。

メニューの用紙も、それほど高価なものを使う必要はない。ブック型のメニューケースに入れるA4サイズのものであれば、50枚~100枚で1000円前後の価格のものからインクジェット印刷に適した用紙を選べば良い。どちらかと言えば、光沢のある用紙よりもツヤなしの方が高級感が出るはずだ。

紙面レイアウトのポイントは、メニューを見るお客の立場になって、「売り込みたい商品」や「関連商品」などを、ストーリー性を持たせて配置していくこと。居酒屋のオーナーなどから、「ビールは儲からないので売りたくないが、ビールばかり売れて困ります」という話を良く聞くのだが、その店のメニューを見てみると、飲料メニューの一番はじめに「生ビール500円」と大きく書いてあったりする。「メニューで『ウチの店は生ビールをお勧めしています』と意志表示しておきながら、『売れて困る』と言っても仕方ないですよね」と、答えることにしているが、これはそんな顧客心理を考えずにメニューをレイアウトしている一例だ。

また、メニューを選択する時は、多くの人がやはり価格を考慮している。だから、なるべくなら食べたい料理に神経を集中できるように、値段は見やすいアラビア数字を使って横書きで書く方が比較検討しやすくなる。たまに漢数字を使った縦書きのメニューを見かけるが、単価が低くメニュー数も少ない業種ならともかく、居酒屋のように注文する品数が多い店、メニュー数が多く価格にばらつきがある店では避けた方が良いだろう。商品名と価格の位置が離れたレイアウトであれば、リーダー「…」と呼ばれる「点線」でつなぐと見やすくなる。

次回は、チラシなど大量に制作する必要がある印刷物について述べてみよう。

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