すでにインターネットに詳しい方ならご存じだろうが、いまインターネット上で最も注目を集めているサービスが「セカンドライフ(以下SL)」だ。
SLとは、アメリカのベンチャー企業リンデンラボ社が開発したインターネット上の「仮想現実世界」の名称。すでに世界中でSLに登録している人々の数は700万人とも900万人とも言われており、今年の夏には、機能は限定的ながら日本語版もスタートしている。
SL は、複数の人間が同時に参加できるロールプレイング型のオンラインゲームと、参加する人々がその中でコミュニティを作ってさまざまな活動を行うことができるSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を組み合わせたような機能を持ったサービスで、映画「マトリックス」の世界のようなものだと言えば判りやすいかも知れない。もちろん「マトリックス」ほどリアルではないが、パソコンを使って立体的な3D世界に入り、ブログでも使う「アバター」と呼ばれる自分の分身を自由に動かしていろいろな場所へ移動したり、他の参加者と会話したりすることができる。面白いのは、SLの中のアバターは自由に空を飛ぶことができるのだ。人類の夢であった「道具を使わずに空を飛ぶ」ことが、SLの中では可能になっているのである。
SLの世界を覗き見るだけなら、サイトから無料の登録を行うだけで誰でも参加できるが、実はSLにはもうひとつ、最も重要な特徴がある。それは、SLの中で参加者が使える通貨があり、その通貨を使ってビジネスを行うことができるという点だ。つまり、SLの中では会社を作ったり店を構えたりして商売をすることが可能なのだ。SLの中で使える通貨は「リンデンドル」と呼ばれ、為替変動制で現実のドルに換金できる。また、毎月費用を支払うプレミアム会員になると、SLの中に自分の土地を所有することができるようになる。もちろん、土地といってもあくまでサーバコンピュータの中のバーチャル(仮想)な区画のことを指すのだが。こうした特徴から、SLはインターネット上での新しいビジネスモデルとして、三越やトヨタ、アイビーエムなどのような大手企業も参加し、それぞれの仮想的な施設を立ち上げている。
現実には、現在のSLはまだ実験途上のような状況であり、特に日本では一般向けのビジネスが成り立つほど参加者の絶対数は多くない。いままでにも何度か述べているが、外食業界は現実に料理を食べてもらうことで料金をいただく商売だから、こうしたバーチャルな世界でのビジネスモデルが成立しにくい。そのせいもあってか、インターネットに関心の薄い業界人も多いが、例えば外食のもうひとつの側面である「非日常のホスピタリティ空間を楽しむ」といった視点から言えば、SLはそうした体験を伝えるためのツールとして大いに効果を発揮するのかも知れない。
いずれにせよ、ネット社会が変化するスピードの速さを考えれば、こうした新しいサービスが今後どのような展開を見せるのかは予断を許さない。そうした意味で、ぜひ一度はチェックしておくべきだろう。
セカンドライフ(日本語版)http://jp.secondlife.com/(※高性能な画像処理が可能なパソコンでないと正しく見られません)